秋の山の味覚といえば、最初に思い浮かぶのはマツタケではないでしょうか。しかし、テレビ朝日の「帰れマンデー見っけ隊!!」では千葉県ではマツタケは採れないと放映されていました。
ところが南房総でも本家マツタケにそっくりなキノコが自生しているのです。このキノコを地元の人は「房州マツタケ」または単に「マツタケ」と呼んでいます。
今回は「房州マツタケ」について調べ、料理を作ってみました。
房州マツタケとは
房州マツタケの本名は「バカマツタケ(Tricholoma bakamatsutake)」。ずいぶんと酷い名前ですが、マツタケより早く発生するためにこんな名前にされてしまったそうです。
地方によってはさまつ(早松)、ニタリ(似タリ)とも呼ばれます。見た目、香り、味が本家マツタケにそっくりで、香りはバカマツタケの方が強いという意見も多くあります。両方ともハラタケ目キシメジ科のキノコですが、バカマツタケの方が小ぶりで赤みががっています。マツタケは主に赤松の林に発生しますが、バカマツタケは、ブナやナラ、シイなどの広葉樹林に発生します。
発生時期と場所
発生時期は9月~10月、キンモクセイの花の咲く頃です。採れる場所は親、兄弟にも教えないと言われていますが、館山市xx、南房総市△△、鴨川市の〇〇など、ある場所にはまとまって生えている場合もあると聞いています。
人工栽培
キノコは人工栽培が容易なものと難しいものがあり、マツタケ、バカマツタケ、トリュフ、ポルチーニなどは生きた木に発生するため人工栽培が難しいキノコです。マツタケは多くの研究機関や企業が栽培の研究を行っていますが、2021年現在人工栽培に成功していません。
一方のバカマツタケは、2017年奈良県森林技術センターが人口培養の菌をある樹木に植え付けて全国で初めて人工栽培に成功しています。
奈良県森林技術センターホームページバカマツタケの人工栽培による継続発生に成功しました。
2018年には兵庫県加古川市の肥料メーカー「多木化学」が完全栽培(自然樹木ではなく木くずなどの人工の菌床で培養)に成功し、2018年10月5日に株価がストップ高を記録。その後も株価が上昇を続け、2018年の始値が2,910円、終値が5,600円、2021年現在は5,000円~7,000円台で推移していますが、生産コストなどの課題があり、2024年現在、事業化には至っていません。
マツタケやバカマツタケの人工培養に成功すれば、一攫千金も夢ではないので、私も遊び半分でやってみようと思います。成功するとは思っていませんが、ホダ木に菌を入れ、ある薬品を入れてみようと思います。
バカマツタケの料理
バカマツタケがスーパーで販売されているのを見たことがありません。また、通販でもほとんど販売されていません。
南房総では9月中旬から10月になると、館山市北条の「アムススギヤマ」、館山市畑のせせらぎ直売所、館山市安布里のJAグリーン館山店などの直売所で販売されていることができます。
2024年10月に房州マツタケを食べてみたいと思い、上記の3点に電話を架けてみました。しかし2023年からほとんど入荷はないそうです。イノシシが増え食べてしまうのが原因らしいと言われています。
全国的には少数ながらも通販で販売されています。食べてみたいという方は「房州マツタケ」はなく「バカマツタケ 通販」で検索してみてください。
今回料理を作るために色々な直売所へ電話を架けましたが、2021年はほとんど採れなかったようで販売はされていませんでした。やっとの思いで1本だけ入手し、他はイオンで本家マツタケを購入しました。
※下の写真の一番右が房州マツタケ。
おいしいマツタケの選び方
軸が白っぽく、太いものを選びます。
傘が開いていないものを「コロ」、傘が少し開いているものを「ツボミ」、「中開き」。傘が開ききっているものを「開き」と呼びます。高級とされているのはツボミと中開きです。
開きは香りが抜けているので価格が安く松茸ご飯に向いています。
マツタケの下ごしらえ
学生の頃バイトしていた寿司店でキノコ類は洗うと風味と食感が悪くなるので極力水を使ってはいけないと教わりました。
始めに石づきを包丁で切り落とし、キッチンペーパーで汚れを落とします。どうしても汚れが取れない場合は、ボウルに水を入れ少しだけ洗い流します。
インターネットで「マツタケの」と入力すると関連キーワードとして、土瓶蒸し、茶碗蒸し、炭火焼き、ご飯などが出てきますので、これらを全部作ってみました。
マツタケ料理は香りが命なのでマツタケの風味を殺さないよう、味付けは控えめにしました。
マツタケの土瓶蒸し
【材料】マツタケ、海老、かまぼこ、鶏肉、銀杏、柚子、すだち、三つ葉、昆布だし、塩、薄口しょうゆ
【作り方】特に難しいことはありません。ダシは鰹節を使わずに昆布のみにしました。材料を適当な大きさに切りそろえ、土瓶(鍋でも可)に入れ、ダシを入れて火にかけます。ひと煮立ちした火を止め、三つ葉を入れ蓋をして少し待ったら出来上がり。スダチを絞っていただきます。
【実食】綺麗に透き通った汁からはマツタケの香りが立ち上ります。下の写真は具が少ないので吸い物の様になってしまっています。
口に入れた瞬間にマツタケの香りが鼻に抜けます。高貴、上品、繊細な香りで、私の中性脂肪だらけの血液が一瞬で浄化されるような味わいです。海老、銀杏、三つ葉、柚子などの脇役たちもいい仕事をしています。
マツタケご飯
今回はモチ米を混ぜておこわにしてみました。そして秋の味覚である栗を入れてマツタケ栗おこわにしてみました。
【材料】マツタケ、酒、昆布だし、塩、薄口しょうゆ、米
【作り方】水300mlに対し5cm角の昆布をいれ3時間ほど浸します。
米の研ぎ方はとても重要です。私は学生の頃、飲食店でバイトをしていましたが、米の研ぎ方は各店舗でかなり違います。ただ共通しているのは、1回目の水はすぐに捨てること。米は水に入れた瞬間に吸水を始めるのでゆっくりやっているとヌカ臭い水を吸ってしまいます。一気に水をいれて手早くかき混ぜ、すぐに水を捨てるのがコツです。あとは数回水を変えて米を研ぎます。水が完全に透明になるまで研ぐ店と、少し濁っていた方が良いという店に分かれます。1時間以上水に浸し、ザル上げする店もありますが、食べ比べても私には違いが分かりません。
米を炊飯器に入れて規定量のダシとマツタケを入れて炊き上げます。ちょっと余談になりますが、昨年7万円のちょっと高級な圧力式の炊飯器を購入したのです。絶対に美味しいと思って買ったのですが、色々試してもどうも私の口に合いません。何か米の弾力がなく、表面がベタついた感じに炊き上がります。
寿司やチャーハンは特に厳しいです。これは好みの問題になってしまいますが、私は圧力式でない炊飯器で炊いた米の方が好きです。
【実食】炊飯器の蓋を開けるとマツタケの香りが漂ってきます。安定のおいしさです。栗は甘味があって美味しいですが、香りが少し気になります。栗は入れない方が良かったかもしれません。
マツタケ焼き
【材料】マツタケ、スダチ
【作り方】マツタケをオーブントースターや炭火で焼くだけです。大きいものは半分に切ります。水分が表面に浮き出てきたら焼き上がり。
【実食】スダチを絞っていただきます。これはマツタケの香りがダイレクトに味わえます。
マツタケの茶碗蒸し
【材料】卵、かまぼこ、銀杏、海老、昆布だし、三つ葉、塩、薄口しょうゆ
【作り方】卵をボウルに割り入れ、よく攪拌します。そしてダシ汁を入れて攪拌したら、こし機に入れてカラザなどを取り除きます。
蒸し器の水が沸騰したら茶碗蒸しの材料を均等に入れます。蓋をタオルで覆うと茶碗蒸しに水分が垂れず綺麗に仕上がります。
最初の3分は強火(IHは5の目盛り)、後の10分は弱火(IHは3の目盛り)にします。蒸し上がったら柚子と三つ葉をいれて蓋をします。
【実食】玉子の甘みと松茸、三つ葉、柚子の香りが渾然一体となって料亭の味です。
マツタケの牛肉巻き
教科書通り料理ばかりでは面白くないので思いつくままに2品作ってみました。今日はだいぶ散財してしまい、今更けちっても仕方がないので牛肉も高級なものを使いました。この和牛は1枚なんと400円。これは絶対にウマいはずです。
【材料】マツタケ、牛肉(1枚400円の和牛)
【作り方】マツタケは千切りにしてレンジで軽く火を通します。千切りにしたマツタケを1枚400円の和牛で巻き、軽く塩胡椒で味つけをします。胡椒はごく少量で白胡椒がおすすめ。フライパンに材料を入れ牛肉の色が変わったら出来上がり。火を止める前に醤油と酒を香り付けに入れます。
【実食】1枚400円の和牛の旨味とマツタケの高貴な香りが口いっぱいに広がります。これは危険なウマさです。
猫が匂いを嗅ぎつけてニャーニャーと騒いでいますが猫にはあげられません。
マツタケの油揚げ包み焼き
以前に油揚げの中に茗荷を入れて焼いたおつまみを教えてもらい、とても印象に残っていたのでこれをヒントに作りました。今回は白菜が余っていたので入れてみましたが、具材は何でもいいと思います。
【材料】マツタケ、白菜
【作り方】マツタケ、白菜をサイの目(7mm角くらい)に切り酒と醤油を入れます。具材を油揚げの中に入れこんがりとキツネ色に焼き上げます。
【実食】白菜は甘みがありジューシー感があります。マツタケの香りと良い具合にマッチしています。